Ryoji Suzuki Memo

浄土ヶ浜


１１月３０日の絵画寄贈に立ち会った私は、前日の１１月２９日に宮古入りしており、その夜は浄土ヶ浜パークホテルに宿泊する。日が暮れてから現地入りしたので、夕闇の宮古市街には足を止めず通過した。ただ浄土ヶ浜へ向かう迂回路なのか、港湾付近はおそらく道路の付け替えが著しく、車載のナビの案内は現在の海上にあたる部分を通行したり、突然思わぬ港岸に出くわし、引き返すのにやむをえず一時停車、その折りに車を降り停泊中にもエンジンのかかる船舶の横から夜の港を数分眺めた。この日わりと穏やかであった陽気にもかかわらず海からの夜の風はたいへん冷たく「この冷たさでは・・・」と、やはり思いは数年前へと馳せる。翌朝は６時に起床し、そこで見たホテルの部屋からの浄土ヶ浜を見下ろす景色は心打つものであった。天気もよろしくホテル屋内３階ロビーで日の出を拝み、その直後に根岸君夫画伯と共に浄土ヶ浜を散策した。ホテルから往復１時間を超え朝日の中ゆっくり浜辺を歩いたことで、写真をあまり写したがらない私はその景観を脳裏にしっかりとどめること、いや、記憶するというより目の前に展開する世界を、視覚、嗅覚、聴覚、あらゆる感覚として心の間近で味わうことにその時間、一歩一歩の瞬間を、感情を、気持ちを費やした。

---