Ryoji Suzuki Memo

前々回・前回の続き｜そんな私が、ふとしたきっかけでその押入れの中に手を突っ込んだことで、元々カビの生えやすい、通気性の悪い記憶域にひとつ風穴が開いたようでもあり、その穴は考え方によっては、時間軸を超え自由に行き来する坑道（トンネル）のようなものでもあり、自ら歩きながら、ある時空間の内壁や壁面に張り付けたネームタグを見て回れるような、導線（通り道）のような役割をする印象までも起きてきた。私の言う、その押入れに放り込んだ「自身の内からでてくる知識や発想」とは、単に制作物のことである。これまでの自身の制作物から今の自身を介し、広く浅く言えば自分のこれまでの在り方～変遷を、最短の時間で見ることも可能である。まだ、何か全域を把握したわけではないが、ある局面からの自身の姿の一面を理解、自覚するような手掛かりにはなりそうだ。とは言っても、やはり「穴」の中を覗くには、まだ潜水するようなイメージがあり、ある程度の時間熱中していると、ふと検索やファイルの内容確認を止めたときに、水面というか、海水面から顔をあげて『ふぅ』と、一息つくようなイメージにつつまれる。

「押入れの穴」おわり