自分にとって、脳とは別の記憶域を取得したような気分になった私は、10年にわたり、自分の内からでてくる知識や発想、インスピレーションを惜しげもなくその記憶域に放り込んできた、例えていうなら、それが「押入れ」である。元々整理整頓のあまり得意ではない私が、それでも個別の段ボール箱にネームをつけながら物を入れ、大箱の中には大中小の小箱を、中がいっぱいになれば、またはいっぱいにならなくとも、新しいくくりの入れ物を用意してみたり、時には中身ごと入れ替えをしたり、見える順序を考えてみたり、と、それなりのおぼつかない手際でもって自分の押入れをいっぱいにしてきたわけであろう。さて、その押入れ。ところが開ける機会があまりない。というより、自分は、自分という者のスタイルは、あまり開けたがらないような日々の連続を維持したがる、とでもいおうか。
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